三島由紀夫セミナー 4日目  19:00~21:30
報告者:篠本賢一

リモートによる今回のセミナーは、メリハリのある展開で参加者の満足度も高いのではないかと思う。前日、前々日同様に、川口部長の導入、宮田慶子氏のチェックポイントの提示、ブレイクアウトルームでの少人数での読み合わせとディスカッション、そして、全体でのディスカッションという流れになった。

この日の課題は、「第3幕」。舞台は、影山邸の庭から鹿鳴館の二階に移る。起承転結でいうところの「転」にあたる場面だ。この幕は、影山伯爵の場といってもいいほど、影山伯爵が大きな役割を果たす場面である。また、この幕は、人物の出入りが目まぐるしく展開が速いことも特徴だ。影山は、2幕のラストで手なずけた女中頭草乃から、青年久雄は、政敵清原と妻朝子の子供であることを知り、朝子への憎悪とも嫉妬とも言い難い激しい感情から、復習の鬼と化す。清原を殺すため、久雄にピストルを渡す影山。また、偽の壮士乱入を企て、清原をおびき出し、朝子が女主人を務めようとする舞踏会を失敗させようともする。これらはすべて第4幕の終幕に向けたおぜん立てだ。

舞台上には、舞踏会の準備をしている使用人たちも大勢登場するが、彼らはすべて影山の息のかかった手下であることもこの場面に、独特の雰囲気と緊張感を生み出すことに貢献している。そのなかで、途中から出てくる写真師の存在や、草乃の心理に重なり合うような金槌の音などの舞台効果がディスカッションでも話題となった。また、影山の手下飛田が去り際に草乃にぶつかるところもその意味するところが何なのか、興味を引いた。幕のラストに朝子は乾杯用のグラスを落とすが、この解釈をめぐっても意見が交わされた。舞台装置に目を移してみると、下手に一階から昇る大階段、上手に裏階段があることから、大劇場での上演がイメージされるが、方法は他にもきっとあるだろう。

私のいたブレイクアウトルームでの、読み合わせは配役して行われたが、宮田さんがト書きと則子と定子を、実行委員の篠本が影山を読み、参加者と親密な交流も果たせたと思う。