カテゴリ: レポート

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記録:蔵人

【宮本研を読む!】最終日の本日は「美しきものの伝説」のリーディング公演、そしてシンポジウム。

主に、演出家・劇作家によるリーディングで、舞台も高い台の上に椅子が5つというシンプルなスタイルで行った。シンポジウムでも話があったが、期間が短いということもあり、それぞれの読む場所も特に打ち合わせなく、出演者の判断でということで行った。しかし、やはりそこは、出演者が演出・劇作を生業としていることもあり、結果、椅子に座るのか座らないのか、相手との距離はどのようにとるのか、そもそも高い台の上に載るのか載らないのか等、空間をどのように使うか、その役・話の内容をどのように捉えているか、それぞれの個性が表れつつも、それでいて、それなりの配置になるという、面白いリーディングとなった。


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シンポジウムでは、演出家・劇作家同士でこの作品をどのように考えたのか、作品に対して考察したい点等、リーディングを観劇していた参加者も含めてディスカッションが行われ、まだまだ話足りないというぐらい、こちらも面白い濃い時間となった。

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出演者から異口同音に出てきたのは、今回のように特に演出家同士で一つの戯曲(一人の作家)を巡って、話し合う機会はあまりなく、このイベントが大変貴重なモノになったという意見であった。

「美しきものの伝説」という作品それ自体が、一つの時代を築いてきた人達がお互いに意見を闘わせる、青春群像劇の一面を持っていることもあり、初日・2日目のディスカッションから見学をした参加者にはどのように映ったのか、大変興味深いなあと思う。

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記録:平野智子

本日は秋浜悟史WSの最終日。10時45分集合で、11時から詩森さんより配役の発表とリーディングのやり方について説明があった。前日に主なメインの配役と方法については発表があったので、この時間で細かい部分が整理された。


出演者全員、ステージの周りで待機、その場に出ている登場人物が舞台に上がる。座る順番は、下手から根子倉造・田貝谷松・勝子・ふさ・和野初男。ト書きはステージ下の上手前。長いので、読む人を交代しながら止めずに続ける形になり、入れ替わる場所を中心に場当たり開始。


13時、リーディング公演スタート。戯曲部の黒澤世莉さんから観客に向けてセミナー全体の説明。詩森さんにバトンタッチし、5日間のWSで何をやってきたかという話。


リーディングは本編(南部弁)のあと、抜粋シーンの標準語版。岩手弁ネイティブの詩森さん・田村さん(WS参加者)も加わって、同じ場面の南部弁版。それから、関西出身者による関西弁版。

聞こえ方がまるで違う。この戯曲が南部弁で書かれた意味と岩手の人ならではの思考回路で文脈が成り立っていることを再確認。


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その後、振り返り。

・通しで読むのが初日以来で、出演者の南部弁がものすごく上達した。

・はじめは方言にとらわれて内容が入ってこなかったが、中身について学んだ4日間があってこそ、話が豊かになった。

・借金が大変というシリアスな芝居に思っていたが、コントっぽい要素が多く、秋浜が新喜劇が好きだというのがちょっと分かるようになった。

・すごく岩手っぽい話。人間関係や谷松の性格がそう。

・南部弁の語尾の意識。自分に戻る。相手にぶつけない。きついことを言うけれど、言い方が違う。明日からも顔をつきあわせて行かなきゃならないからでは?

・自分の話だけど、他人事みたいに言う。

・「標準語は冷たい、南部弁はあったかい」という点については、東京生まれだと標準語が冷たいという意識はないから、幼少期をどこで過ごしたかが大いに影響する。

・標準語は正確性を求められる言葉だから、熱くなると伝わらない。

・方言に直すという作業は、外国語の翻訳と同じ。話せるだけでなく、コンテキストを理解していないとできない。


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今回のWSは、参加者の出身地域が多岐にわたったことで、より一層、秋浜戯曲のもつ地域性が浮き彫りになった。そして、実際に秋浜氏の教えを受けた参加者や娘さんから生の声を聞くことができ、戯曲の読解にとどまらず、作家の人柄や劇作以外の活動にも触れる形になった。実りある時間を共有できたことを、詩森さんや参加者の皆様に感謝したい。


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記録:黒澤世莉


悔しい思いをしている。

参加者の読解が深く、学ぶ一方である。実行委員として参加しているのだから、もう少し場に貢献したいが、受け取る情報が多くなっている。ひとえに自分の準備不足に課題があり、それは悔しいものだ。


個人的な感情を抜きにすれば、宮本研セミナー2日目は非常に順調に進行した。昨日の栗原康さんのトーク内容もふまえつつ、4時間で3時間を越える戯曲の1-3からレクイエムまで、これはおよそ3/4ほどのボリュームである、を、音読しディスカッションしたのである。進行役の川口典成さんの差配も冴えていた。


「美しきものの伝説」は、秋浜悟史の作品群と比較すれば頻繁に上演される演目であり、実際観劇したことがある方も多い。しかし、だからといってこの戯曲の共通理解が進んでいるとも言えない。歴史劇、政治や芸術の議論の劇と捉えられがちだが、そこにこだわると重要なものを見失いかねない。戯曲に書かれていることをしっかり地道に読んでいけば、丁寧に描かれた人間ドラマを発見することは不可能ではない。

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今回のトピックから具体例を出そう。「クロポトキンはコップに酒を。」と書かれたト書きがある。これが何を意味するのか? この疑問から読解をしていけば、おのずとそのシーンの登場人物それぞれの行動が導き出されるのだ。自分は見落としていた部分の気づきをいただいた。


わたしはもともとはドラマを追っていく読み方をするのだが、このセミナーでは時代や歴史的文脈の中での位置づけや、同時代の作家または前後の世代との作家との比較からアプローチすることが多かった。そのため、シンプルにドラマを追う読み筋を疎かにしていた。注意深く読んでいけば気づけたであろうに、スルーしてしまった箇所がたくさんあった。書かれていることの分析と書かれていないことの探求、どちらか一方に偏るのではなく、両方の道筋をしっかり時間をかけてやることが、戯曲理解への近道なんだと思い知らされる4時間だった。


明日はもう少し場に貢献したいが、あまり肩肘張ったところで出来ないことは出来ないので、まずは自分にできることをやり、楽しもうと思う。明日が楽しみだ。


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記録:蔵人

詩森氏より、まずは本日のワークに入る前に、昨日のもう一つの企画【宮本研を読む!】および【栗原康トークイベント】について、昨日イベントを見学した参加者とシェアをした。

作品の中で扱われている、アナーキストや大逆事件の知識を役者が知ることの重要性、さらにブレヒトの演劇論に触れた。

詩森氏が以前、水俣を扱った作品を上演する際に若い俳優たちをつれて水俣へ一緒に勉強に行ったが、その時の俳優たちが震災が起こった時にしっかりした発言をしているのを聞き、水俣での体験を通して、人間のベースができたんだなと感じ、劇団をやるというのは責任があるんだなと思ったというお話があったが、個人的には民衆演劇との関連が感じられ、興味深く、敢えて言うのもなんだが、今回の研修で扱っている二つの作品同士のつながりが具体的に何か見えてきたかなという印象であった。

そしてワーク。

リーディング発表のキャスティングをし、方言の発音に関してはかなり良くなってきているので、さらに意識の流れと解釈を考えてみようとの詩森氏からのアドバイスをもとに、それぞれシーン毎のチームに分かれ稽古をした。
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稽古後、参加者で改めて読んでみると、初日に読んだ時に比べて、ぐぐっと生き生きとしたモノに変わった。

最後に今回のワークショップについて、参加者からフィードバック。

「以前、この戯曲を読んでいた時には分からなかった面白さが今回のワークショップを通して面白さが見えてきた」、「言葉が思考に及ぼす影響というのがこれだけ大きいということが分かった」、「研究者など様々な意見を聞くことによって視野が広がった」等、参加者それぞれに、それぞれのいろいろ得るものがあったようだ。


そして、今回のワークショップそのものが、様々な目的や背景を持つ参加者が集まったこともあり、民衆演劇とのつながりを感じさせる回になったように、私には思われた。

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記録:平野智子

「宮本研を読む!」の研修が始まった。初日ということで、川口部長からセミナーの主旨と2日間の研修の進め方、最終日の発表についての説明があり、それぞれの配役が発表された。

出演者の自己紹介のあと、いよいよリーディング。冒頭を読み、続いてディスカッション。大逆事件を想起するための仕掛けや、芝居が書かれた60年代の世相とのリンクが指摘される。具体的には、ト書きにある「天上から吊されたロープと先端の輪」は絞首刑にあった12人の象徴、政治的な歌を歌って歌本を配る演歌師は60年代当時の新宿フォークゲリラと重なっている。

話が盛り上がり、初日の読みは1幕2場で終了。劇作家&演出家が役を演じるというだけでも興味深いが、なかでもルパシカ(小山内薫)役の篠本賢一さんの熱演が光った。それに対して「自然という言葉をあんなに不自然に言う人をはじめて聞いた」という篠原久美子さんのコメントが秀逸だった。

19時からは、アナキズム研究者・栗原康氏によるトークイベント。

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日本の元祖アナーキストは一遍上人ということで、踊り念仏の話から。「既存の教え・正義に縛られるな」という考え方が「踊ることで自分の役割(職業)をぶち壊す」になったそうだ。

「水滸伝」の義賊の話を経て、次はモーセの「出エジプト記」について。大杉の民衆芸術論に入る前に、「民衆」の定義の確認。いわく、奴隷だったヘブライ人が支配のない場所を求めて逃げ出し、「民衆・民」が生まれた。

と、ここまでで45分が経過。で、駆け足で、大杉の話になるのだが、平たく言うと、ロマン・ロランの民衆芸術論を日常の中に落とし込んだのが大杉。正論や既存の価値観に従うのをやめようと。ブルジョワに従って工場で働くこと、夫に従って妻の役割を果たすこと、あらゆる社会で同じ構造になっているから、やりたくないことを放棄して立ち上がろうと呼びかけたそうだ。

その後の質疑応答も含めて、終始、栗原さん独特の喋りが展開された。あまりに生き生きした大杉栄像で、まるで劇画漫画の主人公を見ているようだった。

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