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記録:黒澤世莉


悔しい思いをしている。

参加者の読解が深く、学ぶ一方である。実行委員として参加しているのだから、もう少し場に貢献したいが、受け取る情報が多くなっている。ひとえに自分の準備不足に課題があり、それは悔しいものだ。


個人的な感情を抜きにすれば、宮本研セミナー2日目は非常に順調に進行した。昨日の栗原康さんのトーク内容もふまえつつ、4時間で3時間を越える戯曲の1-3からレクイエムまで、これはおよそ3/4ほどのボリュームである、を、音読しディスカッションしたのである。進行役の川口典成さんの差配も冴えていた。


「美しきものの伝説」は、秋浜悟史の作品群と比較すれば頻繁に上演される演目であり、実際観劇したことがある方も多い。しかし、だからといってこの戯曲の共通理解が進んでいるとも言えない。歴史劇、政治や芸術の議論の劇と捉えられがちだが、そこにこだわると重要なものを見失いかねない。戯曲に書かれていることをしっかり地道に読んでいけば、丁寧に描かれた人間ドラマを発見することは不可能ではない。

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今回のトピックから具体例を出そう。「クロポトキンはコップに酒を。」と書かれたト書きがある。これが何を意味するのか? この疑問から読解をしていけば、おのずとそのシーンの登場人物それぞれの行動が導き出されるのだ。自分は見落としていた部分の気づきをいただいた。


わたしはもともとはドラマを追っていく読み方をするのだが、このセミナーでは時代や歴史的文脈の中での位置づけや、同時代の作家または前後の世代との作家との比較からアプローチすることが多かった。そのため、シンプルにドラマを追う読み筋を疎かにしていた。注意深く読んでいけば気づけたであろうに、スルーしてしまった箇所がたくさんあった。書かれていることの分析と書かれていないことの探求、どちらか一方に偏るのではなく、両方の道筋をしっかり時間をかけてやることが、戯曲理解への近道なんだと思い知らされる4時間だった。


明日はもう少し場に貢献したいが、あまり肩肘張ったところで出来ないことは出来ないので、まずは自分にできることをやり、楽しもうと思う。明日が楽しみだ。


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記録:蔵人

詩森氏より、まずは本日のワークに入る前に、昨日のもう一つの企画【宮本研を読む!】および【栗原康トークイベント】について、昨日イベントを見学した参加者とシェアをした。

作品の中で扱われている、アナーキストや大逆事件の知識を役者が知ることの重要性、さらにブレヒトの演劇論に触れた。

詩森氏が以前、水俣を扱った作品を上演する際に若い俳優たちをつれて水俣へ一緒に勉強に行ったが、その時の俳優たちが震災が起こった時にしっかりした発言をしているのを聞き、水俣での体験を通して、人間のベースができたんだなと感じ、劇団をやるというのは責任があるんだなと思ったというお話があったが、個人的には民衆演劇との関連が感じられ、興味深く、敢えて言うのもなんだが、今回の研修で扱っている二つの作品同士のつながりが具体的に何か見えてきたかなという印象であった。

そしてワーク。

リーディング発表のキャスティングをし、方言の発音に関してはかなり良くなってきているので、さらに意識の流れと解釈を考えてみようとの詩森氏からのアドバイスをもとに、それぞれシーン毎のチームに分かれ稽古をした。
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稽古後、参加者で改めて読んでみると、初日に読んだ時に比べて、ぐぐっと生き生きとしたモノに変わった。

最後に今回のワークショップについて、参加者からフィードバック。

「以前、この戯曲を読んでいた時には分からなかった面白さが今回のワークショップを通して面白さが見えてきた」、「言葉が思考に及ぼす影響というのがこれだけ大きいということが分かった」、「研究者など様々な意見を聞くことによって視野が広がった」等、参加者それぞれに、それぞれのいろいろ得るものがあったようだ。


そして、今回のワークショップそのものが、様々な目的や背景を持つ参加者が集まったこともあり、民衆演劇とのつながりを感じさせる回になったように、私には思われた。

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記録:平野智子

「宮本研を読む!」の研修が始まった。初日ということで、川口部長からセミナーの主旨と2日間の研修の進め方、最終日の発表についての説明があり、それぞれの配役が発表された。

出演者の自己紹介のあと、いよいよリーディング。冒頭を読み、続いてディスカッション。大逆事件を想起するための仕掛けや、芝居が書かれた60年代の世相とのリンクが指摘される。具体的には、ト書きにある「天上から吊されたロープと先端の輪」は絞首刑にあった12人の象徴、政治的な歌を歌って歌本を配る演歌師は60年代当時の新宿フォークゲリラと重なっている。

話が盛り上がり、初日の読みは1幕2場で終了。劇作家&演出家が役を演じるというだけでも興味深いが、なかでもルパシカ(小山内薫)役の篠本賢一さんの熱演が光った。それに対して「自然という言葉をあんなに不自然に言う人をはじめて聞いた」という篠原久美子さんのコメントが秀逸だった。

19時からは、アナキズム研究者・栗原康氏によるトークイベント。

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日本の元祖アナーキストは一遍上人ということで、踊り念仏の話から。「既存の教え・正義に縛られるな」という考え方が「踊ることで自分の役割(職業)をぶち壊す」になったそうだ。

「水滸伝」の義賊の話を経て、次はモーセの「出エジプト記」について。大杉の民衆芸術論に入る前に、「民衆」の定義の確認。いわく、奴隷だったヘブライ人が支配のない場所を求めて逃げ出し、「民衆・民」が生まれた。

と、ここまでで45分が経過。で、駆け足で、大杉の話になるのだが、平たく言うと、ロマン・ロランの民衆芸術論を日常の中に落とし込んだのが大杉。正論や既存の価値観に従うのをやめようと。ブルジョワに従って工場で働くこと、夫に従って妻の役割を果たすこと、あらゆる社会で同じ構造になっているから、やりたくないことを放棄して立ち上がろうと呼びかけたそうだ。

その後の質疑応答も含めて、終始、栗原さん独特の喋りが展開された。あまりに生き生きした大杉栄像で、まるで劇画漫画の主人公を見ているようだった。

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