記録:黒澤世莉
本日より宮本研の研修が並行して行われるため、午前から夕方までの開催となった秋浜悟史研修。朝は作家、演出家として、題材とどう向かい合うか、取材の重要性についての対話からスタートした。作家にとっても取材は欠かせないが、演出家にとってはなおさらだろうと思う。作家の書いた物語を現前させるためには、作家の書いたものだけでなく、その周辺の情報を含め、書物を読むだけにとどまらず、実際の現地に趣き五感で感じる必要があることは自明のことだろう。対話を通してそのことを再認識した。
昨日詩森さんから参加者の関西出身者にオーダーがあった、「リンゴの秋」一部抜粋の「関西弁への翻訳」を配布し、音読してもらった。南部弁(詩森さんがこう書かれているので今後は南部弁で統一する)の感覚とは全く違う物語が現れて驚いた。例えてみれば、南部弁ではモーツアルトだったものが、関西弁だとベートーベンになるといった感じであろうか。論理的には同じ情報なのだが、印象としては「やわらかいもの」が「はげしいもの」になったという受け取り方になった。
それから南部弁での練習に一度戻ってみる。グループワークで練習をして、ふたたび発表をする。一日でどのグループも明確に南部弁が上達している。音に慣れる、耳が慣れる、口が慣れるというのはこういうことかと確認できた。詩森さんからさらに細かいアドバイスが入る。
その後、模造紙を各チームに配布し、ふせんに「南部弁の印象」「標準語の印象」を書いていくワークをする。マトリクスは「動的←→静的」「高温←→低温」。チームによって同じ印象にはならなかったことが面白かった。おそらく、出身地によっても感じ取り方の違いがあるのだろうと思う。わたしは東京生まれ東京育ちなので、標準語の印象に冷たさがある、という感想は理解できつつも、実感としては感じていない。自分の生まれ育った頃から聞いている言語が、親しみ深さを感じさせるのだろうか、と考えた。
最後に、最終日のリーディング発表についての方針が決められる。南部弁全編と、抜粋の関西弁と標準語をリーディングすることとなった。
個人的には、方言を聞いていることが好きで心地いいので、とても楽しいワークショップだなあと感じている。