2022/2/3 19:00~21:30
報告者:豊永純子

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セミナー3日目は「第二幕を読む!」ということで、事前に参加者の方々から提出のあった下記4つの問いについて議論を行った。

① 第二場 辰也「奥さんが好きだ!」
どうして最後にこの台詞なのだろうか。文脈のつながりを問いたい。

② 第五場 お芳「なんか、みんな〜おかしいじゃない」
これを呆然とみつめている時の辰也の心情をみなさんはどう感じとりますか?

③ 第一場 辰也が、美しいこと・心に響くことなどがこれから変わって行くのではないかという趣旨の発言をするが、実際2022年現在、変わったのか。
また、変化することをどのくらい信じて書かれた台詞なのか。

④ 第一場 雛丸と辰也の芸術論議
しかも雛丸は辰也の内にある審美眼を感じて期待しているのでは?

魅力的な「問い」が発表された後は、お待ちかね、本日の「福田善之インタビュー動画」の時間である。作家の声を聞き逃すまいと集中する、参加者および実行委員の面々。今日の視聴分は福田氏の「台本に全て根拠があるわけでは無い」という言葉から始まり、台詞や戯曲の細かい点についてヒントとなる貴重な16分だった。

「福田さんにとって芝居の毒とは何か?」という質問に対しては、直接的な答えではないとのことだが、「人間はお互いに毒。男の毒は女、女の毒は男。親の毒はこども、こどもの毒は親。」という返答。『オッペケペ』を理解する上で非常に重要な考え方かもしれない。
「雛丸さんは(芝居を)やめたくても、もうやめられない。」という言葉には、どこか福田氏ご自身のことも含まれているように感じた。
三幕三場の奥中の台詞「あれを倒せばいいんだ、倒すためにはすべてのものが手をあげればいいだけだ。」を取り上げ、この一連の台詞に登場する「敵」とは、明治国家の天皇制だと説明された。中には上演時カットされそうになった台詞もあるが、リアルを超える「はみ出し方」がこの芝居の良さだと語ってくださった。
幼い頃の空襲で目にした「焼け死んだ人」について言及する場面もあった。その流れで「ぼくも近年「死体」に近づいている感覚がある・・・」と真面目な表情で呟いたかと思うと、「何をしても「したい」放題」と茶目っ気たっぷりのジョークで締めくくられたので、思わずみんな笑顔になった。

その後総合司会の丸尾聡氏によって第二幕のあらすじと共に、「なぜ雛丸は、辰也を壮士とは違うと言うのか?」「なぜ城山は内務卿鎌田と会う時、辰也を連れていったのか?」などの疑問が参加者に投げかけられた。

さて、4つのグループで行ったディスカッションはというと、作家インタビューや丸尾氏の疑問に触発されつつ、どの部屋でも大変有意義な時間が過ごせた模様。全体共有のときに、どの発表者も「興味深い意見がたくさん出た」と報告があった。

例えば、雛丸・辰也の芸術論議について話したグループは「美しい」というもののレベルのズレに着目し、議論を進める内に、メンバーそれぞれが感じる「美」の話に飛び火していったという。ほんのワンシーン、ほんのワンフレーズの台詞であっても、無限に議論していられる骨のある戯曲であることが、3日目にしてさらにはっきりとしてきたのではないか。
残り2回のセミナーで到底話し尽せる戯曲ではないことを重々承知しながらも、私たちは「したい放題」激論を交わすであろう・・・。